短歌5

人生という名の列車じゃないんだからここでお前が乗ってくるなよ

 

 

子供の頃の話をしてよ ジーンズのおしりに戦時中のディテール

 

 

コインランドリーの洗剤の匂いが、朝焼けに街の輪郭を明瞭にえがき出す。くらっ

 

 

さようなら学ランがちょっとでかい俺 すべての刃物と果物と羽根

 

 

お悔やみ欄のグロテスク体 見出しのM:100のゴシック体 くらっ

 

 

 

 

短歌 くらっ

美術部の先輩がくれたとんぼ玉 舌でひび割れ撫でて 血が くらっ

 

 思い切り紙飛行機をぶん投げてよく飛ぶなんてさては夢だな

 

川のこと全て忘れて網棚にいろはすの水半分残る

 

エイの目にうつる推進機(プロペラ)うまれたり死んだりしていたことはほんとう

 

さん付けの記憶をたどる ぼくたちはまた会いましょうだけが人生

 

短歌3

海に雨、僕らもやがて生活に飲まれひとつになってゆくこと

 

波が海になっていくときさみしくて スープの語源のはなしをきかせて

 

さようなら、すべての生活便利術。橋桁に揺れる車は波に似ていた

 

いつもより深い寝息でゆれているお前の背骨に人魚のなごり

 

新潟の海は濁って海というよりもぼくらの肌に似ていた

短歌2

 

中学の頃好きだった人に会う 花瓶の水を飲みたい季節

 

はるかなる衛星に問うサンフランシスコの平均時給情報

 

もうずっとさわっていたよ 親指のささむけだけを 舞台の上で

 

早下校 あなたのいない回り道をえらんであなたがいてほしかった

 

Hello my fiend, 肌が知るポリエステルのうまれたところ

 

心燃える歌がきっと君のもとへ クッキー・アンド・クリーム柄のあなたの楽譜

 

 

 

 

 

 

 

短歌1

恐竜は鳥になったと図書館の本を広げて処女と童貞

 

 

この時期に消えたくなるのは ここの木も桜だったんだと気づくとき

 

 

たばことかなくなればいい 煙突も お香も アルコールランプも

 

 

夜中だけ雨が降っていたみたい みたいな朝と みたいなおれだ

 

 

いつか死ぬ朝にもきっと消えたいと水を見ながら思うのだろう

 

サーモン短歌

サーモンの赤ゆらめいてああきっと走馬灯にも回転寿司屋

 

一粒ずついくらを食べる 死ぬときも寄り添いあって過ごしましょうね

 

サルモンと書けばぼくらは人間でサルで海からきたということ

 

おればっか食べてる気がする同窓会それでもサーモンのあざやか

 

着色料5億ℓぶちまけて赤い地球の赤いサーモン

 

切り身にも母をあげようAIにサーモンのいる川を描かせる

 

畦道にサーモンの寿司が置いてある 誰かに殺されそうな気がする

 

何度目の遡上だろうか 胃の川を喉の流れを鮭は登って

 

本当に愛しているよ サーモンの寿司との子供に川と名付ける

 

嘘に色をつけるなら赤 サーモンは白身魚って本当ですか

 

何周も何周も回るサーモンのように何度も君に会いたい