人生という名の列車じゃないんだからここでお前が乗ってくるなよ
子供の頃の話をしてよ ジーンズのおしりに戦時中のディテール
コインランドリーの洗剤の匂いが、朝焼けに街の輪郭を明瞭にえがき出す。くらっ
さようなら学ランがちょっとでかい俺 すべての刃物と果物と羽根
お悔やみ欄のグロテスク体 見出しのM:100のゴシック体 くらっ
海に雨、僕らもやがて生活に飲まれひとつになってゆくこと
波が海になっていくときさみしくて スープの語源のはなしをきかせて
さようなら、すべての生活便利術。橋桁に揺れる車は波に似ていた
いつもより深い寝息でゆれているお前の背骨に人魚のなごり
新潟の海は濁って海というよりもぼくらの肌に似ていた
恐竜は鳥になったと図書館の本を広げて処女と童貞
この時期に消えたくなるのは ここの木も桜だったんだと気づくとき
たばことかなくなればいい 煙突も お香も アルコールランプも
夜中だけ雨が降っていたみたい みたいな朝と みたいなおれだ
いつか死ぬ朝にもきっと消えたいと水を見ながら思うのだろう
サーモンの赤ゆらめいてああきっと走馬灯にも回転寿司屋
一粒ずついくらを食べる 死ぬときも寄り添いあって過ごしましょうね
サルモンと書けばぼくらは人間でサルで海からきたということ
おればっか食べてる気がする同窓会それでもサーモンのあざやか
着色料5億ℓぶちまけて赤い地球の赤いサーモン
切り身にも母をあげようAIにサーモンのいる川を描かせる
畦道にサーモンの寿司が置いてある 誰かに殺されそうな気がする
何度目の遡上だろうか 胃の川を喉の流れを鮭は登って
本当に愛しているよ サーモンの寿司との子供に川と名付ける
嘘に色をつけるなら赤 サーモンは白身魚って本当ですか
何周も何周も回るサーモンのように何度も君に会いたい